教學大綱
講義の目的:
量子力學は、物質系に對する基礎的理解や研究、電子デバイスなどの開発のために必要です。さらに、光に関する理解や応用、あるいは最近さかんに議論されている量子コンピューターや量子暗号などの理解や応用には欠かすことができません。ブラ・ケットベクトルを用いた代數的手法は、量子計算の議論をするためには必須です。
本講義は、軌道角運動量、スピン、摂動論を學び、自分で具體的に計算ができて使えるようになることを目的とします。
講義を受講するには:
物理工學科が2年後期に開講している「量子力學第1」を受講している必要があります。また物理工學科が3年後期に開講している「量子力學第3」は是非受講して下さい。これで學部レベルの量子力學が一応完結します。
量子力學を理解し、かつ使いこなすために必要な數學の基礎的事項:
- 線形代數(固有関數、固有ベクトル、固有値)
- 極座標、座標変換、極座標によるラプラス演算子
- 常微分方程式
「偏微分方程式の変數分離による解法」や「常微分方程式の級數解」などは講義の中で説明します。
講義:
(講義時間の配分によっては、以下のいくつかの項目を省略することもある)
この講義は、量子力學における對称性の議論と近似計算理論を紹介するものです。軌道角運動量、スピン角運動量、2粒子の交換などは量子力學に特徴的な對称性の議論であり、摂動論は近似理論の一般論です。いずれにしても、量子力學における物理の本質と數學的な本質(枠組、數學的な技術)を区別して理解して下さい。
今年は、最初に量子力學の形式が線形代數の構造と等価であることを強調することから始めます。
講義項目と理解すべき事項:
- 線形代數と量子力學:ディラックのブラケットベクトル
- 角運動量
- 古典力學における角運動量 (中心力場、多粒子)
- 軌道角運動量:軌道角運動量演算子、交換関係、軌道角運動量固有関數
- 回転不変性と軌道角運動量:保存量(エネルギー保存則、運動量保存則、角運動量保存則)
- 3次元球對称ポテンシャル場内の動径波動関數:例題(3次元井戸 型ポテンシャル、水素原子)と解き方
- スピン角運動量:ディラック方程式、スピン角運動量演算子の交 換関係、スピン変數とスピン波動関數、 ゼーマン効果、スピン軌道相互作用
- 角運動量の合成
- 磁場中の電子の振舞い:ハミルトニアン、ゲージ変換と波動関數
- 摂動論
- 任意の波動関數の固有関數による展開と摂動
- 時間に依存しない摂動(例題:シュタルク効果、ゼーマン効果など)
- 時間に依存する摂動(振動電場内の状態と状態の遷移)
- フェルミの黄金則と遷移確率
- 縮退のある場合の摂動
- 断熱近似と瞬間近似
- WKB近似
- 変分法
- 對称性と波動関數:時間推進、平行移動、回転、粒子の交換(2電子系の波動関數)
成績評価:
測驗
ノートの持ち込みは不可。(本年度は再試験は行なわない予定です)
講義には80パーセント以上の出席を期待しています。通常試験にパスする人は、その程度の出席はしているように思います。(受講生と担当者の双方のために、出席をとることにしました)
この講義で期待している達成度を受講者に理解してもらうために、過去に出題した試験問題を公開します。これらの問題が50パーセント以上正しく解答できることが、単位取得に関する期待レベルです。(答案に何か書いてあれば点數をいくらかづつ付けて、それを加算して50点という意味ではありません)
参考書(テキスト):
「量子力學(上、下)」 L.I. シッフ(井上健訳) (吉岡書店)
Dirac, J.J.Sakurai, Landau-Lifshitz など良い教科書は沢山あります。しかし、量子力學を早く使えるようになりたい人にはシッフのテキストが良いと思います。しかし講義をこのテキストにしたがって進めるという意味ではありません。
参考書(演習書):
「演習量子力學」 岡崎誠、藤原毅夫著 (サイエンス社)
物理工學演習のうちの3~4時間の演習では、量子力學が身につく演習 としては不十分です。各自でいろいろな問題を解くなどすることは、量子力學を理解するためには欠かせません。
|